私たちが挑む「マンション管理業界の4大問題点」とは

マンション管理の癒着
日本において、分譲マンションが大衆化したのが1960年代。そして平成バブルの崩壊以降、なかなか景気が浮上しない日本の中で、新築マンションの建設数に比例して「さしたる企業努力をせず」「右肩上がりで」成長を続けるマンション管理会社。


私たちのマンション生活を取り巻く環境は、世の中の変化とともに大きく変化した一方で、マンション文化が定着して半世紀が立つ今でも変わらない「マンション管理会社の悪しき慣習」。



マンション管理会社の4大問題点を挙げてみます。

■問題点1:中間マージン・リベートが管理費・修繕積立金の不足・値上げに

世の中の管理会社は、管理組合の一員であるあなたに知識や経験がないことを良いことに、


  • 管理委託費や小修繕工事における「中間マージン」の搾取
  • 大規模修繕工事における「リベート(バックマージン)」の受領


を継続しています。


管理委託費や小修繕工事における「中間マージン」の搾取とは

管理会社の仕事のうち、管理会社が直接社員やパートを採用して業務に当たっているのは、


  • 事務管理業務(会計・出納・長期修繕計画の企画、そしてフロント担当者による理事会や総会の支援)
  • 24時間コールセンター
  • 管理員
  • 日常清掃員


といった、本社スタッフや現場スタッフが行う業務であり、


  • 定期清掃(機械を使った清掃)
  • エレベーターの保守点検
  • 機械式駐車設備の保守点検
  • 消防設備の点検 
  • 排水管の清掃
  • 貯水槽の清掃
  • 植栽の剪定
  • コンシェルジェの派遣
  • 警備員の派遣
  • 機械警備
  • その他設備の点検や保守


これらについては、管理会社が自社のスタッフで行わず、「手配屋」として専門業者へ再委託しています。

また、


  • 建物や設備の小修繕工事や補修工事など「営繕工事」


についても、管理会社のスタッフが直接作業することはなく、工事業者や設備業者に行わせています。

これらの専門業者が行っている業務を「専門業務」と呼びます。


ほとんどの管理会社は、これら専門業務について、専門業者を下請けに使い、


  • 常に中間マージンを乗せて自社の見積もりとして提案するか
  • 専門業者の名前で高めの見積もりを作らせ、専門業者からリベート(バックマージン)を得ているか


いずれかの方法により、お客様であるあなたの見えにくいところで、常に中間マージン(またはバックマージン)を得ています。

管理会社には、スタッフが自ら清掃や点検・工事をすることなく、手配するだけで常に10~100%のマージンが入る仕組みです。


その分、管理組合は常に10~100%(つまり本来価格の2倍!)の高い支出をしている、ということです。


「あいだに管理会社が入って調整してくれているのだから、マージンを取るのは当たり前ではないか」


という声が聞こえてきそうですが、あなたにとって大切なことは、再委託や外注そのものの否定ではなく、ほとんどの管理会社が、


  • 手配屋程度の仕事で、割高な中間マージンやリベートを取っている


つまり「中抜きをしているだけ」ということです。


そもそも、管理会社が専門業者を手配する仕事は、上述の「事務管理業務」に含まれています。


つまり、管理会社は、専門業者の手配などに関する報酬を「事務管理業務」で得ながら、さらに「中間マージン」で二重に収入を得ているのです。


しかも、「中間マージン」の内容がお客様であるあなたへ開示されることはありません。


管理組合が専門業者と直接契約すれば100の価格で提供してもらえる業務が、110~200(2倍)で提供されている可能性が極めて高い、ということです。


大規模修繕工事における「リベート(バックマージン)」とは

管理会社は、大規模修繕工事について、良くて「ビジネスチャンス」、悪いと「リベートチャンス」として捉えています。


管理会社は、上述のような日常の管理業務だけでなく、大規模修繕工事についても、管理会社が自社で修繕工事の作業員を抱えていることはまずありません。大手管理会社でも同様です。


管理会社は大規模修繕工事で、次のような方法で利益を上げています。


  • 自ら「施工業者」として工事を受注し、大規模修繕工事の施工業者へ再委託(ほぼ丸投げ)し20~30%の中間マージンを得る方法
  • 自ら「設計監理者(技術コンサルタント)」を受注し、大規模修繕工事の施工業者の選定を補助する立場を取りながら、実は施工業者から10~20%のリベート(バックマージン)を取る方法
  • 自らは「大規模修繕工事には一切関わらない」と言いながら、施工業者から5%程度のリベート(バックマージン)を取る方法


いずれの方法であっても、管理会社があなたの見えないところで施工業者から中間マージンやリベート(バックマージン)を取ることになります。

施工業者は自社の利益を確保するために、管理会社へ中間マージンやリベートを支払う分、工事見積もりを出すことになり、その負担は管理組合が被ることになります。


大規模修繕工事は、管理会社にとって「純粋なビジネスのチャンス」ではなく、「楽してリベート(バックマージン)を得るチャンス」なのです。



以上のように、あなたは管理会社から知らずのうちに取られている中間マージンやリベートの分を、毎月支払っている管理費や修繕積立金で補填しているのです。


その結果、日々の管理費や将来の修繕積立金が足りなくなり、毎月の徴収額を引き上げて埋め合わせしなければならなくなります。


管理会社から「管理費の大幅な値上げ要請に答えないと契約更新しない」とプレッシャーをかけられる小~中規模のマンション管理組合や、修繕積立金不足が理由で個々の支払いが月額2万、3万と相当高額な高経年のマンションは、いずれも管理会社に取られている「管理委託費に含まれる中間マージン」「修繕工事費のリベート(バックマージン)」に起因しているのです。


このような悪循環になることを「知っていて黙っている」のが、マンション管理会社です。


■問題点2:親会社志向・二重価格で二律背反

分譲系管理会社にとってのお客様は管理組合?親会社?

マンション管理業界で「分譲系管理会社」とは、親会社(デベロッパー・分譲主)が建てたマンションの管理業務を受注する割合の多い管理会社のことを指します。特に古くからマンション管理業を営んでいる多くの中堅~大手の管理会社は、この「分譲系管理会社」に当たります。


分譲系管理会社は、デベロッパーとは「親子の関係」です。当然ながら両者において人材の往来があり、主に親会社であるデベロッパーからから子会社である管理会社へ、役員や部長などが幹部クラスの待遇で「降りてくる」のが一般的です。


この分譲系管理会社からすると、マンション管理の仕事を作ってくれるのは、親会社であるデベロッパーです。見方を変えれば、「親が産んで育ててくれなければ、子供は成長しない」ということになります。


分譲系管理会社の「親会社志向」は、グループでマンションを建て、管理をすれば、当然生まれるものです。


私たちは、企業がグループで成長することを全く否定しません。むしろ親子が一体となってマンション事業を営むことによる相乗効果も期待できます。


多くの分譲系管理会社は、親会社であるデベロッパーに「ブランド力」のあるところが多く、


「管理会社は◯◯ブランドのグループだから、管理も任せて安心」

「◯◯の子会社だから裏切ることがない」


と考えていあるマンション住民は一定数います。



しかし、本当にそうでしょうか?

分譲系管理会社、というだけで安心なのでしょうか?


「安心」と「安心感」つまり『なんとなく安心』とを混同していませんか?



分譲系管理会社が顧客志向でなく親会社志向になるのは「建物のアフターサービス補修」の時です。

デベロッパーには、新築時にマンション購入者へ約束する「アフターサービス」(不具合の補修)制度があります。


各社が用意する「アフターサービス規準」に基づき、建物の部位や設備ごとにおおむね新築後1年、2年、3年、5年、7年、10年と無償補修期限を設け、期限内の不具合は管理組合の負担なく補修する責任を負っています。


しかし、デベロッパーとしては、アフターサービス補修は「お金が出る一方で収入にはまったくならない」仕事ですから、なるべくお金を掛けたくないのが本音です。実態は施工業者(ゼネコン)へ支出させているのですが、、、


一方で、マンション購入者の団体である管理組合としては、アフターサービスの無償補修期間内に建物や設備の不具合を見つけ、なるべく無償で補修して欲しいと考えます。


ここで本来あるべき管理会社は、管理組合の側にたち、一緒に建物や設備の不具合を探し、デベロッパーへアフターサービスの補修要求を行うべきです。


しかし、分譲系管理会社は、どうしても親会社のほうを向かざるを得なくなります。

つまり、建物や設備の不具合の箇所を積極的に見つけることも、デベロッパーへアフターサービス補修を強く要求することも、仕組み上できないのです。子は親に逆らうことができないのです。


これがまだ「軽微な補修」なら良いですが、「瑕疵」つまり「欠陥」に相当するようなケースだった場合、管理会社が管理組合の側に立って親会社へ能動的に無償補修を働きかけるなど、ありえないのです。とても大きな事例では、横浜市で2件あった、杭打ちの施工不良で建物が傾いたマンションの件は記憶に新しいです。


これが、分譲系管理会社の課題である「親会社志向」です。



私たちクローバーコミュニティは親会社を持ちませんので、管理会社を切り替えて頂いたマンションで上述のような分譲主との協議が必要な場合は、積極的に管理組合をサポートしていますが、分譲系管理会社は管理組合とデベロッパー(親会社)との間でのトラブルが起こった時に、顧客志向になることには「無理がある」のです。


独立系管理会社には「親代わり」がいる

分譲系管理会社と異なり、デベロッパーを親会社に持たない管理会社は「独立系管理会社」と呼ばれています。私たちクローバーコミュニティも、独立系管理会社と言えます。


マンション管理の仕事を作ってくれる親会社がいる分譲系管理会社と異なり、独立系管理会社は自分たちでマンション管理の仕事を探さなければなりません。


しかし、独立系管理会社の多くは、「親会社」の代わりにマンション管理の仕事を供給してくれる「デベロッパー」がいます。


それは、マンション開発を専業とし、管理会社を子会社などグループに持たない新興~中堅デベロッパーです。マンションを建てたら、管理の仕事を独立系管理会社へ提供することになります。


独立系管理会社としては、 デベロッパーを親会社に持たないため、「親代わり」にマンション管理の仕事を供給してくれるデベロッパーの存在はとてもありがたいものです。


そのため、このような「管理の仕事を提供してくれる」デベロッパーとの付き合いの深い独立系管理会社は、管理組合よりもデベロッパーのほうを向かざるを得なくなります。


つまり、独立系管理会社の多くはアフターサービス補修において、「親会社」ならぬ「親代わり」であるデベロッパーに逆らうことはできません。


管理組合の立場にたって建物の不具合の補修箇所を発見することも、デベロッパーへ厳しく補修要求することも、仕組み上できないのです。 親会社志向と同じことが、独立系管理会社にも起こっています。


結局、分譲系管理会社も独立系管理会社も、新築マンションを供給するデベロッパーを大切にしなければなりません。


実際に管理委託費を払ってくれるのは、マンション住民である管理組合です。間違いなく、管理会社にとって「管理組合」はお客様です。

しかし、ほとんどの管理会社は結果として「もっとも大切なステークホルダー(利害関係者)」であるデベロッパーのために働かざるをえない仕組みなのです。


私たちクローバーコミュニティのように、独立系管理会社でありながら、デベロッパーから管理業務を引き受けず、あくまで管理組合からのお問い合わせに基づくリプレイスに特価した営業活動に絞ることで、初めて「親会社志向」と決別し、管理組合の支援に徹することができるのです。


管理委託費の「二重価格」も大きな課題

例えば、管理会社があるマンション管理組合へ提示する管理委託費の見積金額を100として、すぐ近くのマンション管理組合へ、90とか110の委託費見積もりを提示することは、それほどおかしいとは思いません。85~115くらいの範囲であっても、


「標準的なマンション管理組合に比べて業務量が多い(少ない)・管理組合の要望レベルが高い(低い)から、管理委託費は高め(低め)」


とか


「他の管理会社との比較案件で勝つために、競争力のある見積もり金額」


などと、企業が仕事を獲得し維持するために許される範囲の妥当な判断に基づく値付け、と言えるかもしれません。


しかし、同じマンション管理会社が同等のサービスレベルで、70から130の価格レンジだったら、さすがにおかしいと思いませんか?


自分のマンションの管理委託費が100なのに、近隣のマンションの管理委託費が同じサービスレベルで70であったら、


「なんで管理委託費にこれほどの価格差がでるのか」

「近所同士のマンションなのに、お隣は管理委託費が安すぎる」

「管理委託費って、一体どんな費用なのか、納得できない」


となりませんか?



でも、マンション管理業界では、この程度の価格差(二重価格)は当たり前です。

では、管理委託費の二重価格は、どのようにして生まれるのでしょうか。


上述の

  • 分譲系管理会社が親会社であるデベロッパーからマンション管理の仕事をもらうときの管理委託費
  • 独立系管理会社がマンション管理部門を持たない新興~中堅デベロッパーから管理の仕事をもらうときの管理委託費

と、

  • 管理会社のリプレース(競争見積り)で提示する管理委託費(見積もり提示額)

とは、25~35%の価格差が「普通に」あります。


新築時にデベロッパーから「無競争で受注」する事のできる管理委託費の見積もり金額は、飲料水で例えるなら、自動販売機やコンビニで(定価で)買うようなものです。


いわば「マンション管理の『希望小売価格』」です。


一方で、管理会社のリプレース(競争見積り)で提示する際の管理委託費は、スーパーで(値引きされて)買う、と言った例えが良いかもしれません。


いや、ちょっと違います。マンション管理業界では、飲料水をスーパーで買うのが「適性な価格」で、自動販売機やコンビニで買うのは「かなり利益の乗った価格」です。


同じ管理会社、同じサービス、同じフロント担当者、同じ設備保守なのに、新築から無競争の管理委託費が、他の管理会社と比較しただけで20~30%も下がったら、おかしいと思いませんか?


二重価格と言われても仕方ないと思いませんか?

はじめから「競争力のある管理委託費」で提案して欲しいと思いませんか?


そして、なぜ世の管理会社は「二重価格」の設定を当たり前のように行っているのでしょうか?



それは、顧客であるマンション管理組合が、近隣の同じ管理会社が管理するマンションの管理委託費を聞くことができない(近隣マンションの情報が入ってこない)ことが、二重価格を生む原因となっています。


日本人の気質なのでしょうか、マンション管理組合を小さなムラとすると、近隣マンション(隣りムラ)との管理組合同士の交流を積極的に持ちたがりません。


隣のマンション管理組合はライバルでもないでしょうに、なんとなくお隣さんとの付き合いに気を遣うからでしょうか。お金(管理委託費)のことをズケズケ聞くのは憚られるのかもしれません。


マンション管理組合という「ムラ」の内向き志向が、近隣のマンションの管理委託費と自分のところとを比較することを妨げてしまい、なかなか管理委託費の「相場」を知る機会がありません。


さらに、マンション管理会社が、自社が管理するマンション管理組合(理事)同士を積極的に繋げようとすることはまずありません。


同じ規模のマンションなのに、管理委託費が二重価格であることが知られてしまうからです。


私たちクローバーコミュニティは、価格表に基づき世帯数に応じて管理委託費を設定させていただいていますので、そもそも二重価格はありえません。

ですので、当社が管理業務を受託する他のマンションの理事や住民同士をお引き合わせすることに、なんのためらいもありません。


しかし、残念ながら昔から全く変わることのない、


マンション管理業界の「親会社志向」と「二重価格」。

大きな課題なのです。


■問題点3:受け身、守り、動かない企業文化

私たちクローバーコミュニティの共同代表のうち、深山は中古マンションの売買仲介を通じてマンションを「不動産」の視点で見、管理会社を2社経験し、今でもマンション管理士(マンション管理コンサルタント)として管理組合の目線で他の管理会社と接しています。


また、松原はデベロッパー(新築マンション販売)の視点で管理会社の対応を見、実際に福岡で管理会社(クローバー管理)を創業し、これまで多数のリプレースを経験してきました。


これらの経験からわかったこと、それは


「世のマンション管理会社には、『受け身で、守りで、動かない企業文化』が根付いてしまっている」


という結論に行き着きました。



マンション管理業界は、不動産業界の中で、デベロッパー(開発・分譲) → 設計事務所(設計)→ゼネコン(建設) → 管理会社(保守) という序列のようなものがあります。
デベロッパーがマンションを建てて、初めてマンション管理のビジネスが生まれます。
 
 

この時点でマンション管理会社の中に「管理の仕事は取りに行くものでなく、親会社からもらうもの」という受け身の姿勢が身についてしまったのかもしれません。刷り込まれている、と言っても良いでしょう。


また、管理会社の売上高はデベロッパーやゼネコンに比べて桁違いに低く、マンション管理という「商品やサービス」が形に残らないこともあり、非常に地味な業界です。


しかし、「地味な業界」と「受け身・守り」とは違います。「受け身・守り・動かない」ことが、顧客であるマンション管理組合にとって良いことはありません。


マンション管理会社の業務は、管理員の派遣や清掃、設備保守など、マンションの日々を守ることが基本ですが、その基本を出ることなく、常に待ちの状態・守りの姿勢で動かない管理会社が多すぎます。


実際、私たちが見てきたほとんどの管理会社には、残念ながら次のような姿勢が定着してしまっています。


  • 管理組合の運営について、改善・改良に関する積極的な提案が見られない。(理事会から言われなければ動かない。言っても動かない担当者もいる)
  • 提案があっても、ほとんどがマンション管理業界で一般化された商品やサービスであり、個々のマンションの特性や置かれた状況に関係なく画一的に用意される。(例:管理組合一括加入の専有部サービス)
  • 自社の売上になる(管理委託費とは別途の収入になる)サービスだけは管理組合の利益になるかどうかを度外視して積極的に売り込む。(例:修繕・補修工事)
  • 管理委託契約書(業務仕様)に書かれた業務以外の依頼は引き受けない。(別途オプションで提案、という概念もない。)
  • 管理組合からの依頼に基づくイレギュラー対応はしたがらない。(特に大手管理会社。管理組合のためになるとわかっていても、均一的なサービスの域を極力出ないことで、合理性・効率性を高めることを第一としている。)
  • 管理組合からの質問に断定的な回答をしない。(言質をとられるのを極端に恐れる。)
  • 総会の場で出席者から理事会へ寄せられた質問や批判に対し、理事会をフォローせず傍観者となっている。(理事会を守るよりも先に自社の利益やリスクヘッジを優先し、困っている理事長を助けない。)
  • 現場のことはフロント担当者や管理員に任せきりで、会社としてマネジメントしていない。

これら、「受け身、守り、動かない」マンション管理会社の文化・習慣は、ビジネスモデルの転換や異業種からの参入など、パラダイムシフトが起こらないかぎり変わらないと考えています。私たちクローバーコミュニティは「積極的で、攻めの姿勢で、良く動く企業文化」を全体に浸透させ、保守的過ぎるマンション管理業界へ一石を投じたい、そう強く考え、実行していますが、業界全体がなかなか変わらないのは事実です。


■問題点4:提案力・合意形成力・サービス力のないフロント担当者

管理会社変更(リプレース)の直接の引き金「フロント担当者」の「3ない体質

「マンションの管理会社」と言って多くの方が想像する「人」は、管理員であり、清掃員であり、大規模なマンションになればコンシェルジェや警備員、と言うでしょう。


そして、年1回の通常総会に出席すると、出欠票を集めて集計したり、総会の司会進行をサポートしたり、時には議案を読み上げたりする「人」と会います。


また、あなたが理事会役員に選出され、理事会へ出席すると、テーブルや椅子を並べ、資料を配布し、あなたと一緒に議論へ参加する「人」との接点が急激に増えます。


フロント担当者です。



フロント担当者は、管理会社にとって、管理組合(顧客)対応の窓口(フロント)として、どのマンション管理組合にも必ず設置されています。


フロント担当者は「窓口(フロント)」であり、「営業マン」ではありません。

担当者は、自らが苦労してマンション管理組合の新規開拓をしたり、管理業務の受注活動をする経験がほとんどありません。


フロント担当者には、はじめから顧客(管理組合)用意されています。

一人が複数のマンション管理組合を担当することで、安定的な給与が会社から保証されます。


そのため、フロント担当者は「サービスマン」ではなく「事務的」な対応になりがちです。


これに加え、上述の「『受け身・守り・動かない』企業文化」で記したように、保守的過ぎる管理会社による採用・教育・研修を経て会社に一定期間在籍すると、マンション管理会社の典型である「提案・合意形成・意欲の乏しいフロント担当者」が生まれやすいのです。


私たちはこれまでのキャリアの中で、仕事柄、他社の管理会社フロント担当者をたくさん見てきました。


その中には、

  • 個々の業務の対応が悪い
  • マンション管理に関する専門知識が足りない
  • コミュニケーション能力が低い

という基本的な問題を抱える人も結構多いのですが、ここは割愛します。

  • 提案がない・顧客から言われなければ動かない
  • 理事会での議論をまとめるようなファシリテーション(合意形成)がない
  • 顧客のために働くというサービス精神やモチベーションが低い 

管理会社の規模にかかわらず、ほとんどのフロント担当者が共通して、これらの一つまたは全てに該当します。


能力というよりは、姿勢の問題です。そしてその姿勢を作るのは、管理会社の


3ない体質


に問題があるのです。


フロント担当者には「提案」がない

例えば、理事会の席で、フロント担当者が積極的な提案を自発的にするシーンに出会ったことはほとんどありません。極めて事務的な人が多いです。


大抵の場合、理事会から依頼や要望・指示があって、初めて動くフロント担当者がほとんどです。まるで

「理事会がオファーしなければ一生このまま何も提案しないのではないか?」

「フロント担当者は何しに理事会へ来ているの?」

と疑ってしまうほどです。


たまにフロント担当者から提案があるとすれば、上からの指示で管理を受託するマンションへ画一的に出したものか、自社の売上になる(中間マージン・バックマージンに繋がる)ようなものばかりです。


提案内容が未熟でも、管理組合のニーズやウォンツを的確に捉えていなくても良いのです。まずはフロント担当者が担当する管理組合の課題を見つけ、自発的に問題提起し、改善(改良)案を出す。


このアクションができなければ「フロント担当者は単なる管理会社の窓口担当」であり、理事会のアドバイザーにはならず、頼りにならない存在、ということではないでしょうか。


「言われてから動く」「個別の管理組合の課題に即した提案をしない」残念なフロント担当者が本当に多いのです。



フロント担当者には「合意形成能力」がない

フロント担当者は、複数のマンション管理組合を担当し、多数の理事会や総会の場に出席していますから、理事会や総会・住民説明会等での組合員間の議論が円滑になっていないケースにたくさん遭遇し、経験しているはずです。


また、フロント担当者は、理事会や総会での議題・懸案事項に関し、過去の経緯を最も把握できる立場にいますし、事前に周辺情報を勉強したり参考資料を用意するなど、組合員間の合意形成を促進するための前準備ができるポジションにいます。


しかし、多くのフロント担当者は、合意形成の支援ができません。


例えば、理事会の場でフロント担当者は、理事役員同士の議論にほとんど自分から入り調整することができません。


たとえ理事会役員同士の意見が対立したり、逆に意見が全く出ない沈黙状態が続いても、割って入るフロント担当者はほとんどいませんし、役員同士の議論が噛み合っていなくても、前提条件をわかりやすく補足説明し、共通理解を促すような調整に入るフロント担当者も非常に少ないです。


理事会役員の中に合意形成能力のある方がいれば、円滑な議論になりますが、そのような方がいない場合、円滑な議論を助けられるのはフロント担当者しかいません。それにもかかわらず、助けられないのです。

フロント担当者が、理事役員間のやり取りの傍観者になっているのです。


また、フロント担当者は、理事会が結論を出すところにコミットしません。

「理事会で結論を出してください。」というスタンスです。


自分の発言やアドバイスが理由で理事会が間違った方向へ進んだ場合の責任(リスク)を取りたくないのではないか?と疑いたくなるほど、管理組合の決議にコミットしません。


合意形成の能力(ファシリテーション)が低いこともありますが、「理事会の話し合いや、もっと言えば管理組合の運営へ積極的に関わろう」「お役に立ちたい」というプロとしてのスタンスに欠けている、ということではないでしょうか。



フロント担当者には「サービス精神」がない

「顧客のために働くモチベーションが低い」「サービスマインドが非常に少ない」という方が適切かもしれません。


冒頭で書いたように、そもそもフロント担当者は自らが苦労してマンション管理組合を新規開拓したり、マンション管理の仕事の受注活動をする経験がなく、はじめから顧客(管理組合)=自分の給与(飯のタネ)が用意されていることから、「サービスマン」ではなく「事務的」な体質になりがちです。


管理会社の営業部門が新規で管理物件を受託し、フロント担当者へ割り振られることを


「また担当物件(=仕事=負担)が増えた」


とネガティブに捉えるフロント担当者がどうしても多くなってしまうのです。

これは管理会社の評価制度による影響かもしれません。


そもそも、マンション管理会社はフロント担当者に「サービスマン的な要素」よりも「事務遂行能力」を求めているフシがあり、管理組合のために体だけでなく「頭と心」に汗をかくサービスマインドを求めていないとしか思えません。


そう確信する理由として、フロント担当者の上司は、担当者が個々の管理組合へイレギュラー対応や一歩踏み込んだサービスを提供することに消極的であり、「一つの管理組合の仕事をし過ぎると物件が多く抱えることができなくなる」「理事会の開催頻度はなるべく少なく」と担当者へ釘を刺すような話を数えきれないくらい多く聞くからです。


もっと言えば、自宅の住環境を良くしようと積極的に理事会役員を務める住民に対して、一歩間違うと「面倒な客」としてネガティブに捉える雰囲気が、管理会社にはあるのです。


このような環境下において、フロント担当者のサービス精神が高まるはずがありません。

サービス精神が高まらないフロント担当者が課長になり、部長になれば、当然ながら部下も同じようなマインドに育ち、管理会社全体がサービス精神を失う姿勢となるのは当然です。


フロント担当者は「個々のマンション管理組合にとって最適な管理を提供するサービスマン」でなければなりませんが、これを徹底する管理会社を我々は見たことがありません。



以上、マンション管理業界の「4大問題点」を述べました。

私たちは、これら既存の管理会社が変わることのできない問題点の逆を徹底して歩むことを大切にしています。

■私たちが考える「管理会社の役割」とは?